TOEFL 対策

TOEFL対策大解説! とこ先生編

近年、TOEFL受検が益々重要な意味を持つようになってきた。かつては米国やカナダの大学受験にのみ必要だったTOEFLが日本の大学受験でも活用されるようになったからだ。既に日本の一部の私立大学で求められている英語の4技能を測定するTOEFL等の資格・検定試験の受検が、これまでのセンター試験から大学入学共通テストに変わる2020年度(2021年1月)からは多くの国公立大学受験でも求められるようになる。

英語の「聞く」「読む」「話す」「書く」の4技能を測定する資格・検定試験にはGTEC、IELTS、英検、ケンブリッジ英語検定、TEAP、TEAP CBT、TOEFL iBT、TOEIC L&R/TOEIC S&Wと各種ある。ここでは、これらのうち知名度の高いTOEFLについて、英検やTOEICとの違いを踏まえて解説し、勉強法を紹介する。

2020年度には日本の小学校の英語教育も改革される。2008年度に小学5、6年生に外国語活動として導入された英語教育は、2011年度に小学5年生から必修となったが、さらに2020年からは小学3、4年生で外国語活動として実施される。筆者の場合、英語教育は中学校からで、「読む」「書く」が中心だった。だが、幸い、小3の時に父が買ってくれたネーティブスピーカーの音声によるオーディオ教材付き独習本や母が勧めてくれたNHKラジオ番組基礎英語で英語を自学自習していたので、中学・高校と英語は大の得意となり、大学入試でも苦労はしなかった。その後、社会人になってからふと思い立ってあくまでも趣味として英検の勉強をし始めた。英語圏の国に留学や居住することなく、英会話教室に通うこともなく、日本でテキストとオーディオによる通信教材のみを使って独学で英検2級から開始して英検2級には1回の受検で合格し、英検準1級に挑戦した。英検準1級は1回目は1次試験で合格したものの、2次試験で不合格だった。だが、すぐ次の英検準1級を申し込み、幸い2回目にして合格した。英検とTOEFLでは出題される英語の分野が異なるが、英検で培った技能は博士号を取得する米国の大学出願のためのTOEFL受検で活かせた。ぜひ、この記事を読んで参考にしていただきたい。

そもそもTOEFLとは

TOEFLとは

TOEFLはTest of English as a Foreign Language(外国語としての英語のテスト)の略称だ。名称に「外国語としての英語」とある通り、英語を母国語としない人々を対象としている。米国非営利教育団体Educational Testing Service(ETS)が開発・運営を担っている。開始は1964年というから、実に55年もの歴史がある。開発・運営団体が米国にあることから、いわゆるアメリカ英語のリーディング、リスニング、スピーキング、ライティングの4技能から大学レベルの英語の使用力や理解力を測定する。従って、TOEFLの高得点は米国やカナダの大学への出願には欠かせない。また、米国やカナダに在住していた日本人高校生が帰国生入試を受験して日本の大学に進学する場合にも、TOEFLの得点が求められてきた。近年、とりわけ2020年度からは日本の大学入試改革に伴い、日本在住の日本人高校生のTOEFL受検の需要が増加することは序文で述べたとおりだ。

TOEFLが大学レベルのアメリカ英語の使用力や理解力を測定することから、内容はアカデミックなものだ。英語を母国語としない受験生向けの米国やカナダの大学入試の役割を担うため、受験生を選別するためのテストと考える人も多いだろう。確かにその目的もある。しかし、本来の目的は他にある。それは、米国やカナダの大学の講義について行くのに必要な英語力を受験生に身につけてもらいたい、というものだ。従って、本来、TOEFL勉強の到達点は大学入学ではなく、入学後の講義にある。つまり、他の受験生との競争よりむしろ大学の講義内容をものにしていけるよう自分の英語力を高める――自分との闘いがTOEFLの真の目的なのだ。

結果の有効期間が2年しかないので注意が必要だ。2年以上前に受検したTOEFLのスコアは米国やカナダの大学では通用しない。米国やカナダの大学受験に活用する場合は、TOEFL受検時に志望校を登録しておき、結果が直接志望校に届くようにしなければならない。出題傾向は後述する。

英検やTOEICとの違い

まず、英検は、正式名称を実用英語技能検定という。公益財団法人 日本英語検定協会が実施している。創設は1963年であり、TOEFLとほぼ同じく長い歴史をもつ。「実用英語」という名称から分かるように、日常生活やビジネス場面で使用される英語から出題される。主に日本で英語の勉強をしてきた人々を対象として日本で実施されてきたが、日本企業のグローバル化による海外赴任者の増加に伴い外国で居住する日本人が滞在国(イギリス〔ロンドン〕、米国〔ニューヨーク、ロサンゼルス、ホノルル〕の4か所)でも受検できるようになった。ネーティブ・スピーカーと共に現地校に通う日本人生徒なら小5で英検1級を受検するケースもある。まさに英語は習うより慣れよだ。筆記試験とリスニングテストからなる一次試験に合格すると、日本人または外国人の面接委員とのスピーキングによる二次試験を受ける。

英検のスコアを日本の高校・大学出願時に利用する場合は、TOEFLと同様に有効期間が2年間だ。筆者のように、それ以外の目的なら、永久資格となる。

次に、TOEICは正式名称をTest of English for International Communication(国際コミュニケ―ション英語能力テスト)といい、TOEFLと同じくETSが開発・実施する。ただし、日本では国際ビジネスコミュニケーション協会(IIBC)が実施・運営している。英語を母語としない人々を対象とした、アメリカ英語による日常生活や職場でのコミュニケーション能力を測定することを目的とする。1977年から実施が開始された。

当初、試験問題はリスニングセクション(45分間:写真描写問題、応答問題、会話問題、説明問題)とリーディングセクション(75分間:短文穴埋め問題、長文穴埋め問題、読解問題)だけからなっていた。いずれも選択肢から正しいものを選ぶマークシート方式である。その後、次第に企業や学校でのスピーキングとライティング能力を測定するニーズが高まり、2007年1月からパソコンを使ったスピーキングテスト(20分間:音読問題、写真描写問題、応答問題、提示された情報に基づく応答問題、解決策を提案する問題、意見を述べる問題)とライティングテスト(60分間:写真描写問題、Eメール作成問題、意見を記述する問題)の実施も開始された。

TOEFL対策の3つのステップ

TOEFL合格のための計画の立て方

読者の中には、TOEFLの点数は合格ラインぎりぎりでかまわないから、とにかく米国やカナダの大学に行って勉強したい、と意気込みだけはしっかりもっている人もいるだろう。だが、先述の通り、TOEFLの真の目的は大学入試合格というより大学の講義について行くのに必要な英語力を身につけておくことにある。だから、TOEFLの点数が合格ラインぎりぎりでは、仮に大学に入学できたとしても、単位が取れず、留年や退学、しいては友人も作れず孤立することなども予想される。合格ラインを余裕で超える点数を目ざしていただきたい。

TOEFLを受検する人は米国やカナダの大学または日本の大学への進学を目指しているので、大抵は大学受験まで後1~3年あるケースが多いだろう。そこで、3年前からの予定をざっと挙げてみたい。

準備期:大学受験/TOEFL受検3年前~

・普段の高校、大学、塾/英会話教室等での英語の勉強に励む。

・TOEFLの出題傾向を調べる。

演習期:大学受験/TOEFL受検2年前~

・志望校が求めるTOEFLの点数を調べる。

・試しにTOEFLを受けてどの技能の点数が何点たりないか把握する。

実践期:大学受験/TOEFL受検1年前~

 ・TOEFLを受検し、志望校が求めるTOEFLのスコアに近づけていき、超える。

注意:2020年度に日本の大学受験で資格・検定試験の受検を求める大学への進学を志望する場合は、一般に、CEFR(欧州評議会が作成した、外国語の学習・教授・評価のための言語共通の参照枠組み、下から順にA1、A2、B1、B2、C1、C2の6段階)のA2からB1レベル以上をめざす。高3の4月~12月中に2回まで受検したスコアが大学入試に利用される。文部科学省による各資格・検定試験とCEFRとの対照表(平成30年3月)を挙げておく。

参考までに、一般に、カナダの大学の方がTOEFL合格ラインが米国の大学(超難関大を除く)よりも高く設定してある。なぜなら、銃社会である米国と違ってカナダは銃社会ではない分治安が良い上、大学の学費は米国よりカナダの方が安いから人気があるが、大学の数ではピンからキリまで1000校ほどある米国より、全部で10ある州/準州の各州/準州に10校前後ずつしかないカナダではカナダ人優先、というより留学生をあえて取るほど大学の数がないからだ。つまり、カナダの大学はよほど英語ができない限り留学生お断りとしているのだ。従って、治安や経済面でカナダの大学を目指すなら、よほどTOEFLで高得点を取らないといけないことを覚悟しておいてほしい。

次に、出題傾向について述べる。

TOEFLの出題傾向

TOEFLはリーディングセクション、リスニングセクション、ライティングセクション、スピーキングセクションの4つからなる。TOEFLをペーパーテストで受検できた時代(スピーキングセクションはなかった)にはどの受験生も各セクションを一斉に受けたものだが、現行のTOEFL iBTは各受験生ともずらしてあり、どのセクションから始まるかは実際に受けてみるまでわからない。困るのが、たとえば誰かがスピーキングセクションに取り組む声が聞こえてきて、自分がやっている他のセクションに集中できないことだ。逆に、他の受験生が他のセクションをやっている間、自分がスピーキングセクションで話していることが聞かれているため、何となく気恥ずかしくなる。集中力と度胸が物をいう。

どのセクションとも内容は大学の講義を意識したアカデミックなものとなっている。出題形式は以下の通りだ。

リーディングセクション(60~100分):長文を3~5個読み、各12~14問ずつの問題に取り組む。長文の個数が受検者ごとに異なるのは、主催者ETS側が統計目的で入れたダミー問題が含まれることがあるためだ。どれがダミー問題なのかは容易に判別できないので、どの問題も真剣に取り組まねばならない。アカデミックな単語力、コンピュータに表示された長文を読み選択肢問題を解いていく集中力、知らない単語が出てきても前後の意味内容から特定する推察力が必要だ。

リスニングセクション(時間:ダミー問題の有無により60~90分):大学での会話パターン:大問2問、1会話につき5問ずつ(教授との相談、職員との相談、学生同士)と講義パターン:大問4問、1講義につき6問ずつ(教授から学生への講義、教授と学生たちとのディスカッション)からなる。ただし、ダミー問題があれば会話大問1問、講義大問2問が追加される。

ライティングセクション:Integrated task(リーディング・リスニング・ライティング)とIndependent taskからなる。Integrated taskは3分間のリーディングの後、同じトピックのリスニングを2分間行い、続く20分間にリーディングとリスニングで得た情報を150~225ワード程度で要約する。Independent taskは、あるトピックに対し、30分間内に自分の立場(AかBのどちらが良いか、または賛成か反対か)を選び300ワード程度で根拠を含めて述べる。構成としては、書き出し(自分の立場)、本文(根拠3つ:3段落)、結論の合計5段落が一般的だ。筆者の場合、自分の体験(たとえば日本ならではの体験:スクールバスがなく、徒歩通学など)を基にできるだけ具体的に述べると、点数が高かった。

スピーキングセクション(全部で約20分間):Independent task(問題数:2問、準備時間:15秒、回答時間:45秒)とIntegrated task(リーディング・リスニング・スピーキングパターン――問題数:2問、準備時間:30秒、回答時間:60秒;リスニング・スピーキングパターン――問題数:2問、準備時間:20秒、回答時間:60秒)の2つからなる。ヘッドセットを着用し、マイクに向かって話した内容がコンピュータに録音され、採点に回される。

Independent taskでは、立場を述べ(I agree/disagree with the idea that …)、根拠1(Firstly, …)、根拠2(Secondly, Moreover etc.)を述べる。一方、Integrated taskでは、リーディングでメインポイントを見つけ、リスニングでリーディングのメインポイントに関連した具体例・説明または反論を聞き取る。次の30秒の準備時間中に話す内容をメモし、スピーキングで1.何について話されていたかを簡潔に述べ、2.リーディングでの1つ目のメインポイントを要約し、3.リスニングの内容との関係性を示し、(4.2つ目のメインポイントがあれば要約し)、5.関係性を示す。

筆者の体験では、やむなく言い直す場合に一言Sorryなどと言うと、意外と点数が高くなった。採点は左右されないと言われる発音は、良いに越したことはなく、やはり点数が高くなった記憶がある。

TOEFLの勉強法

時期、セクションごとの勉強法を挙げてみる。

準備期:大学受験/TOEFL受検3年前~

まず、TOEFLの内容をじっくりと把握するために、開発・運営を担うETSそのものが出版したThe Official Guide to the TOEFL Testを精読しよう。

スピーキングの練習として、英会話教室等での英会話に加え、普段から家で英語で独り言を言ったり、外では英語で物事を考えたりする習慣をつけよう。筆者は『携帯版 英会話とっさのひとこと辞典』(巽一朗、巽スカイ・ヘザー著、DHC社)に出てくる英会話をすべて暗記し、現在居住するカナダでの家族や友人との日常会話やカレッジでカナダ人に講義をする際や、米国での勤務にも役立てている。

この時期の普段の英語の4技能を意識した勉強に並行して単語やイディオムの暗記の他にお勧めしたいのが英文法の勉強だ。筆者は高校時代に大学受験向けの英語勉強法の一つとして高校の英文法教科書を1冊丸々暗記したが、これが今の仕事の一つ、米国特許登録商標庁向け医化学特許/論文日英翻訳業務に非常に役立っている。英文法が完璧に理解できているとスピーキングやライティングに活かせるので、ぜひ受検まで時間をかけて少しずつ頭に入れていってほしい。

 演習期:大学受験/TOEFL受検2年前~および実践期:大学受験/TOEFL受検1年前~

TOEFLリーディングには60~100分もの長時間にわたりコンピュータに表示された英文を読み問題に解答する集中力が求められる。TOEFLリーディングパッセージの多くのトピックが科学だ。Magoosh TOEFL Blogでは、オンラインでTOEFLのような科学的英文が読めるサイトを8つ紹介している。読んでいる間、知らない単語が出て来たら辞書で意味を調べ、Word文書の単語集を自分で作成して暗記に努め、語彙数を増やしていこう。

リスニングには英語によるニュースを聞くと良い。NHK WorldのNewsroom Tokyoはオンデマンドで日本やアジアを含む諸国の日々のニュースが英語で聞ける。まだネイティブスピーカーの発音に慣れていない場合、Newsroom Tokyoを見ると、普段日本語でしか耳にしない語は英語ではこう言うのかとわかったりして興味深い。なお、TOEFLでは日本語訛りの英語はほとんど耳にすることはないので、ネイティブスピーカーによるニュースを聞く方が断然良い。お勧めはオンデマンドの米国のニュースNBC Nightly News with Lester Holtだ。NBC Nightly Newsを聞き、シャドーイングしてネイティブの発音をものにしてほしい。筆者はネイティブスピーカーからも訛りがないとよく言われるが、確かに英語でのコミュニケーションが取りやすく、生活が楽しい。

先に紹介したThe Official Guide to the TOEFL TestにはTOEFLライティングセクションのうちIndependent taskに出題されるすべての問題が挙がっている。5段落で、内容(自分の立場〔AかBのどちらが良いか、または賛成か反対か〕とその理由が含まれているか)、構成(英文の構成、流れ、論理性)、文法、語彙に気をつけて30分以内で300ワード程度の英文エッセイを具体的に書く練習をしてみてほしい。エッセイを書いている間はMicrosoft Wordのスペルチェック機能をはずしておき、書き終えてからスペルチェックを入れて復習するとよい。

仕上げにETSのOfficial TOEFL iBT Tests, Volume 1とVolume 2で4つのセクションの演習をしていこう。

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